私が医師になってから30年、医療は驚異的に進歩し、以前なら治療困難な病気や合併症を持つ患者の治療も可能になってきた。患者に合併症があれば投与する薬の種類も増え、重症患者は点滴チューブだらけのスパゲティ症候群≒そうした患者を看る看護師にはより多くの知識と経験が必要とされる。ミスなく業務をこなすだけでも手一杯なのに、日本の病床当たり看護師数は欧米と比べて格段に少なく過酷な労働状況だ。絶対数が少ないために看護師獲得競争は激化し、低い診療報酬点数で病院も厳しい経営状態にある。看護師の待遇改善も思うにまかせず、院長や看護部長は頭を抱えている。医師や看護師の現場に負荷がかかれば、愚痴も生まれやすい。心身ともにギリギリの者同士がオペ室で仕事すれば、離婚寸前の夫婦が一緒に暮らすようなものだ。さらに手術室や救急業務は、少しのミスが生死に直結する。緊張感のなか、中堅看護師不足で新人にストレスを与えれば、医療安全が守れないうえ、早期離職の危険性が高まるだけだ。
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